奨学生インタビュー

大分高専専攻科(機械工学科)修了後、九州大学大学院へと進学。座学は決して得意ではありませんでしたが、気づいた時には、「研究のおもしろさ」に引き込まれていました。日々、手厚くご指導くださる先生・先輩方を追い越すことを目標に、これからも研究活動に励んでまいります。

奨学生応募の動機は?

私は、将来的に高専または大学に所属し、材料研究の最先端を走りたいという強い思いから、博士課程へと進学しました。この思いは、高専での講義や実験の中で、特に楽しみに感じていたのが金属材料学だったということや、試行錯誤した中で、自分が考えたアイデアで課題を解決したときの達成感がきっかけになっていたと思います。博士課程への進学は高専在学中にも、うっすらとではありますが、検討していました。ただし、博士課程に進学するための準備はほとんど何も知らなかったと言っても過言ではありません。本奨学金制度を知ったのは、M1の10月くらいだったと思います。上記の思いや不安を先生に相談したところ、「それならちょうど!」といった感じで教えてもらいました。選考会では、嬉しいことに良い評価をいただきました。現在は特別奨学生として、充実した博士論文研究に取り組むことができています。将来は「研究のおもしろさ」を伝えられる研究者を目指しています。また、高専を卒業してからの研究者ということも一つのアピールポイントとして述べられるように、日々精進していく所存です。

研究内容を教えてください。

マグネシウム(Mg)合金は実用金属の中で最も軽量な材料であり、航空機等の構造材料として期待されながらも、発火温度が低い上に消火が困難である点や、機械的性質の問題から、実社会では広く普及していませんでした。しかし、これらの問題を解決することのできる高強度高耐熱Mg合金が開発されました。開発されたMg合金は、特異な層状(LPSO)構造をもち、塑性変形によってキンクと呼ばれる変形領域が形成されます。このLPSO型Mg合金は、キンクが導入されることで材料が強化される「キンク強化現象」を発現し、新しい材料強化現象が見出されたとして大きな注目を集めています。
私は、「キンクの形成」と「キンク強化現象」のメカニズムを解明するために、電子顕微鏡を用いて研究を行っています。これらの課題を解決することができれば、Mg合金のみに留まらず、他の金属材料はもちろん、セラミックスやポリマーといったあらゆる材料へも適用可能な、革新的な材料強化指針が見出されるのではないかと期待されています。

軽金属奨学会 特別奨学生卒業にあたり

 2024年3月25日をもって、博士の学位を取得することができました。これは、軽金属奨学会の特別奨学生として、修士2年次から4年間、多大なご支援を賜りましたおかげでございます。軽金属奨学会関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。
 私は特別奨学生の卒業生として、何を伝えたら良いのか非常に迷いましたが、本奨学会の特別奨学生として採択されることのメリットを残したいと思います。1点目は、圧倒的な金銭的サポートですが、これは割愛します。2点目は、軽金属学会にて特別セッションを設けていただき、一般講演より長い時間を与えてもらえたことです。これにより、より多くの方々へ自身の研究成果を丁寧に発表できる上に、さらにその後の質疑の時間に、自身の研究を深化・展開していけるような、あるいは別の視点からのご指摘を多数いただくことができました。3点目は、特別奨学生として過ごす数年間は、非常に多くの方々と交流することができることです。これから1人の研究者として戦っていく上で、この繋がりはかけがえのないものだと感じております。
 軽金属奨学会の皆様には、研究活動だけでなく、博士課程修了後の進路についても温かいお力添えをいただきました。改めまして、関係者の皆様には深く感謝申し上げます。