奨学生インタビュー

群馬県出身。北海道大学に入学後、学部1年次の授業において「材料」の面白さに触れ、工学部応用マテリアル工学コースに進みました。学部4年次よりアルミニウムの表面処理に関する研究に従事。趣味はカメラと写真、半世紀前に製造されたレンズで覗く世界が楽しいです。

奨学生応募の動機は?

本奨学金の存在を知ったのは学部4年生のときです。他の奨学金制度と比較すると給付金額が大きく、もしも進学するならぜひ応募してみたいと憧れを持ちました。一方、まだ研究を始めたばかりであり、博士課程進学も決断していなかったため、どこか遠くの世界のことのように感じていました。
修士課程に進学後、研究の楽しさを実感し、博士課程進学を視野に入れ始めたころに本奨学金を思い出しました。応募を決意したのは修士1年の晩夏。学費補助により経済的に自立して学生生活を送れること、自分自身の研究費を持てること、それらのお金を修士2年次からいただけることに魅力を感じました。当時は博士課程に対する様々な風説に影響を受けてしまい、「私は博士課程に進学してやっていけるのだろうか」「修士1年の今、進学を決断してもよいのだろうか」と正直不安なことばかりでしたが、当たって砕けるつもりで挑戦してみることにしました。
現在は特別奨学生として博士課程学生生活を送っておりますが、学位取得後も教育研究機関において研究を継続することを目指しています。軽金属に関する表面科学・表面技術をリードする研究を行っていきたいです。また、これらの面白さを多くの人々にアピールし、分野全体をさらに盛り上げていきたいです!

研究内容を教えてください。

アルミニウム(Al)は、工業的に幅広く用いられている金属でありますが、酸化還元電位の低い「卑」な金属でありまして、そのままでは容易に腐食してしまいます。そのため、アノード酸化によってAl 表面にポーラス型酸化皮膜(アルマイト)を形成することにより、腐食を抑制しております(図1)。
私は「あらゆる環境において錆びない」高耐食性アルマイトを夢見て、アルマイト形成条件を種々変化させ、生成する酸化物のナノ構造制御を試みています。一般に、アルマイトは硫酸をはじめとする酸性電解質水溶液を用いて作製されますが、生成する酸化物中に電解質由来のアニオンを不純物として含んでしまうことが耐食性向上のための課題でありました。本研究では、塩基性電解質水溶液を用いてアルマイトを形成することにより、不純物を含まない純アルミナからなるアルマイトを生成するとともに、そのナノ構造を世界で初めて規則的に配列しました(図2)。この新規なアルマイトは、高耐食性皮膜としてのみならず、ナノテクノロジーの観点からも応用が期待できます。

軽金属奨学会 特別奨学生卒業にあたり

修士2年から博士3年までの4年間、ご支援をいただきありがとうございました。金銭面の不安なく研究に打ち込めたおかげで、充実した学生生活を送ることができました。
特別奨学生の皆さんは博士課程に進学予定の修士課程の学生、あるいは博士課程の学生でありますので、学会で顔を合わせるたびに最近の研究事情や進路のお話をする貴重な仲間になりました。所属大学や専攻は異なり、距離も離れていますが、それぞれの地で活躍する仲間たちをモチベーションにしながら学生生活を送ることができました。将来は、ここで出会えた方々と共同研究に発展させることができたら嬉しいです。
さらに、軽金属学会において特別奨学生セッションを設けていただき、多くの先生方や企業の方々に研究発表させていただけたことは非常に光栄でした。理事の先生方をはじめ、ご指導いただいた皆様にお礼申し上げます。
奨学会事務局の皆様は、私の研究の進展や進路の決定を温かく応援し、喜んでくださいました。心より感謝申し上げます。
このように、金銭面のみならず、奨学生であることをきっかけに様々な人との繋がりを持てたことが、特別奨学生として過ごした4年間の大きな収穫です。これらを糧にし、軽金属の研究者としてさらに飛躍できるように、これからも頑張っていきます。