奨学生インタビュー

 兵庫県立神戸高校卒業後、大阪大学工学部応用理工学科に入学。大学で様々な講義を受ける中で、医療に対して材料の面から貢献したいという想いが強まったことをきっかけに、現在は金属3Dプリンタを用いた骨インプラント材料の研究をしています。休みの日に旅行やスポーツ観戦をすることが好きです。

奨学生応募の動機は?

 博士課程への進学は、修士課程への進学時から視野に入れていました。しかし当初は、自らの力で魅力的な研究を展開できるのかという不安や、金銭的な負担に対する懸念もあり、すぐに決断を下すことはできませんでした。そのような中、就職活動と並行して研究に取り組むうちに、自身の研究に対する興味の深さと探究心を再認識し、最終的に博士課程へ進学する決意を固めました。ちょうどその頃、本奨学金制度について指導教員からご紹介いただきました。本制度は、修士2年次から学費や研究費の支援を受けられるだけでなく、同じ分野に取り組む学生との交流機会が得られる点にも大きな魅力を感じました。
 将来的には、基礎研究と応用研究の双方を推進し、産業界に持続的なインパクトを与えられる研究者を目指しています。そのためにも、本奨学金制度の支援を受けながら、より深い専門性と広い視野を養っていきたいと考えています。

研究内容を教えてください。

 チタン(Ti)およびTi合金は、高い比強度、耐食性、生体適合性を兼ね備えており、航空宇宙や医療福祉など幅広い産業分野で利用されています。とりわけ生体医療材料としては、体内で長期間機能するインプラントへの応用が進んでおり、インプラント材料の破壊を防ぐための高強度のみならず、骨への負担を軽減するための低ヤング率を併せもつ新規金属材料の開発が求められています。これは、骨に十分な荷重がかからず骨の劣化を引き起こす「応力遮蔽」の抑制に関わる重要な課題です。
 私はこの課題の解決のため、金属3Dプリンティングの一種であるレーザ粉末床溶融結合法(L-PBF)に着目し、微細組織制御による力学特性の向上を目指しています。L-PBFは任意形状の材料作製に加え、高速レーザ照射によりマルチスケールの微細組織を形成できる点に大きな利点があります。骨と同程度のヤング率を有しつつ、高い破壊耐性を示す新たなインプラント材料を創製することで、応力遮蔽の問題を克服し、より安全かつ早期の回復を促進できる医療材料の開発に貢献したいと考えています。