奨学生インタビュー

福岡県北九州市出身.β型チタン合金における変形・破壊挙動の温度依存性について研究をしています.クラシック音楽が好きで,オーケストラでホルンを演奏しており,金管楽器の音色に及ぼす金属組織の影響についても研究をしています.

奨学生応募の動機は?

 修士一年の夏,私は経済的な理由から博士課程に進学することに躊躇していました.そんな時,本奨学金制度を知りました.修士課程在学中でも学費補助,潤沢な研究費を頂ける本奨学金制度にはとても魅力を感じ,応募に至りました.申請書を書き始めたころは「選考に落ちたら博士進学はしない」と思っていましたが,自分の研究を客観的にまとめ,将来の見通しを書き綴るうちに改めて研究の面白さに気づき,申請書を書き終わるころには「必ず博士進学するんだ!」という決意が固まりました.
 私の将来の夢は大学教授になることです.科学の第一線で活躍する大学教授に強い憧れがあります.音楽家やサッカー選手が「人に夢を与える仕事」だとすると,大学教授は「人の夢を叶える仕事」だと思っています.研究成果を通して科学技術が発展すれば,間接的に誰かの夢を叶えることに繋がるかもしれません.そして,教育をすることで,直接的に生徒の夢を叶えられるような教授を目指しています.私も自分の夢を叶えるために指導教員に師事し,研鑽に努める所存です.

研究内容を教えてください。

 タイタニック号の沈没は,当時の海水温マイナス2℃において,船体に用いられた鋼の靭性(延性)が低下して脆くなり,衝撃に弱くなったことが原因です.一般に,体心立方格子構造(bcc構造)を有する金属材料は,ある温度を境に破壊形態が延性的から脆性的へと遷移する「延性-脆性遷移挙動(DBT挙動)」を示すことが知られています.bcc金属を低温構造材料として用いる場合,DBT挙動を理解し,制御することは安全性の観点から非常に重要です.
 私はβ型チタン合金の塑性変形挙動の温度依存性を明らかにし,これがDBT挙動に与える影響について研究をしています.β型チタン合金とは,チタンにVやMoを添加し溶体化処理を行うことで,チタンの欠点である「加工性の乏しさ」を改善したbcc構造を有するチタン合金です.β型チタン合金におけるDBT挙動を明らかにすることができれば,β型チタン合金を優れた低温構造材料として航空宇宙や超伝導分野などへの更なる利用展開が期待できます.