奨学生インタビュー

学部4年次は陶磁器の加飾技術,修士課程ではバイポーラ電気化学を利用した軽金属の表面処理についての研究を行い,博士課程からはマグネシウムのアノード酸化の研究を行っています。様々な分野の研究に携わった経験を強みに,「私だからできる研究」を日々模索しています。

奨学生応募の動機は?

 博士課程進学は,修士課程進学後から視野に入れ始めましたが,自分自身の実力や金銭面,また卒業後の進路に大きな不安があり,なかなか決心することができませんでした。しかし,研究活動と就職活動を行う中で,アカデミックの研究をこのまま続けたい,という気持ちが大きくなり,修士2年の5月に進学の決意を固めました。
 本制度は,他学会で交流があった2019年度特別奨学生の北海道大学 岩井愛さんに教えていただきました。他の奨学金よりも金額が大きいこと,研究補助費がいただけることに加え,同じ軽金属分野の研究を行っている,他大学の特別奨学生の方と交流の機会があることも魅力的でした。また,憧れの存在である岩井さんと同じ特別奨学生になりたい,という思いもあり,応募しました。
 卒業後は,大学や公的学術研究機関で研究を継続したいと考えています。また,軽金属,表面処理分野においては,世界中の研究者に認知されるような研究者になりたいです。

研究内容を教えてください。

 マグネシウムは,実用金属中で最も低い密度を示すため,輸送機器や電子機器などの軽量化を実現する次世代材料として期待されていますが,極めて卑な標準電極電位を持つことから,表面処理により耐食性を向上させる必要があります。マグネシウムに対してアノード酸化を施すと,高い電圧領域では試料表面に火花が生じ,硬質かつ厚い酸化皮膜が生成します。しかし,膜厚分布が不均一であることや,酸化皮膜内に含まれる多数のボイドなどが影響し,高い耐食性が得られません。高い耐食性を有する酸化皮膜を作製するためには,酸化皮膜の構造を制御する必要があると考え,私はアノード酸化時の電解波形に着目しました。電解波形とアノード酸化皮膜の構造の関係を系統的に調査することで,耐食性に及ぼす酸化皮膜の構造の影響を明らかにし,最終的には電解波形の最適化を行い,実用化が可能な高耐食性酸化皮膜の作製を目指しています。