奨学生インタビュー

仙台高等専門学校マテリアル環境工学科を卒業後、北海道大学工学部に編入学。現所属のエネルギーメディア変換材料研究室ではAl合金系潜熱蓄熱材料に関する研究を行っています。幼い頃から科学実験やものづくりが好きで、テレビでよく見た「でんじろう先生」に憧れ、研究者を目指しました。

奨学生応募の動機は?

 私が本奨学金を知ったのは博士課程進学を決めた後、修士課程2年次の夏頃でした。その際、学費と共に研究費補助も含む点に率直に魅力を感じました。もし採用いただけた場合、研究に専念できることはもちろん、自らの研究費を管理することも将来研究者を目指す上で非常に価値ある経験になると思い、応募しない手はありませんでした。しかし、応募時の唯一の懸念点は、私の研究の軸である合金系潜熱蓄熱は軽金属分野において研究例が多くないことでした。だからこそ、本奨学金への応募は自身の研究について、軽金属分野の視座から審査して頂ける貴重な機会であると考え、挑戦する気持ちで応募させていただきました。
 特別奨学生となった今、軽金属分野にAl合金系潜熱蓄熱をアピールすると共に、軽金属の専門家の方々の意見を吸収しながら今後より一層深い議論ができるよう精進してまいります。将来は軽金属を始めとする金属材料学を専門の主軸として、蓄熱工学や化学工学、エネルギー学などマルチスケールに研究を展開できる創造性のある研究者を目指しています。

研究内容を教えてください。

 私は高温蓄熱のためのAl合金系相変化材料(Phase change material: PCM)について研究を行っています。潜熱蓄熱とはPCMの融解凝固などに伴う潜熱を用いる蓄熱技術であり、高蓄熱密度や一定温度で熱供給可能などの特徴があります。また、高温用PCMとして、高熱伝導性かつ組成の変更で任意に変態温度を調整できる合金系PCMが有望です。一方、合金系PCMでは融解時の漏れや高い腐食性が長年の課題でした。
 私たちの研究グループでは近年、その課題を克服した直径数十µmの合金系相変化マイクロカプセル(Micro Encapsulated PCM: MEPCM)を開発しました。当初開発されたものはAl-Si系MEPCMでした。現在もAl合金を中心に様々な組成のMEPCM開発が進んでいます。私もAl合金系MEPCMの開発や応用研究に取り組んできましたが、現在はMEPCMの特異かつ未解明な凝固現象に焦点を当てた研究に特に注力しています。
 MEPCMの特異な凝固現象とは同じ合金組成のバルクよりも過冷度が増大する現象です。本現象の解明を試みることで合金系材料科学における新たな知見が得られないかと考えています。また、本現象の応用により蓄熱工学分野において検討例の無い、合金系PCMを用いたガラス化利用型潜熱蓄熱技術の開発を研究の最大の目的としています。