公益財団法人 軽金属奨学会 設立60年史
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89 私は、軽金属奨学会研究補助金を2006年度から継続して支給されております。主な用途は研磨・腐食等の消耗品購入と国内学会の旅費です。特に春秋の軽金属学会講演大会等への参加を通じて、ポーラス金属分野の多くの研究者の方々と交流を深めることができました。そこでの貴重な議論により、自身の研究を飛躍的に発展できたことが、本研究補助金による最大の成果と感じております。私の研究テーマは、超塑性材料の可塑性とポーラス金属の機能性を併せ持った新しい軽金属材料の創製です。例えば、市販の超塑性5083アルミニウム合金板と発泡剤粒子を積層したプリカーサから、ブロー成形と加熱発泡により、多孔質構造を有するバルジ体の作製に成功しました[図1]。 現在、私がポーラス金属分野の末席を占めていられるのは、ひとえに貴財団の助成の賜物です。この場を借りて、心より感謝申し上げます。軽金属奨学会研究補助金への 感謝を込めて首都大学東京 教授北薗 幸一 この度の軽金属奨学会創立60周年記念史の発刊に当たり、僭越ながらこのような寄稿をさせて頂く機会を得ましたので、以下に2008年度よりご支援頂いている教育研究資金・研究補助金で得られた研究成果の一例をご紹介したいと思います。[Al-Mn系合金のクリープ特性およびミクロ組織変化の定量評価] 自動車熱交換器用Al-Mn系合金のミクロ組織を、熱処理によって様々に変化させた試料を作製し、幅広い温度ならびに応力条件下でクリープ試験を行なった。その後、合金の初期結晶粒径やMn系化合物相のサイズ・体積率、Mn固溶量などの組織因子を、室温ならびに高温における強度と関係づける回帰式を導出し、各強化機構の寄与の大きさを定量評価した。そして、このような独自のミクロ組織制御法を基に、従来材よりも耐クリープ性に優れた合金を作製することに成功した(「耐クリープ性に優れたアルミニウム合金材の製造方法」(特許第5257670号) 表1参照)。軽金属奨学会からの 支援に感謝を込めて横浜国立大学 教授廣澤 渉一図1超塑性5083アルミニウム合金板から作製された ポーラス構造を有するバルジ体。№合金溶体化ろう付け加熱平均結晶粒径(μm)クリープ試験条件クリープ試験値備考温度(℃)応力(MPa)破断時間(s)最小歪速度(/s)実施例1AG1なし43.825045585842.43×1062AG2なし33.725045442203.31×1063AG3なし32.425045207001.20×1054AG4なし-25045166101.37×1055AG2有り33.825045399704.42×1066AG3有り32.425045198601.26×105比較例1ANG1なし29.22504518901.10×104溶体化短時間2ANG2なし24.5250452409.07×104溶体化なし3ANG1有り29.72504518251.16×104溶体化短時間4ANG1有り28.42504515921.35×104溶体化なし表1 本発明の実施例および比較例

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