公益財団法人 軽金属奨学会 設立60年史
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83たり少額ではあるが、年間十数件の新規テーマを対象に助成を行っている。もちろん、この場合にはロードマップに記載されているテーマに関連するものが優先的に選択されている。その中で、特に有望なものや深堀する必要のあるテーマについては、アルミニウム協会の中長期委員会で助成を行い、国プロへの昇格に向けて全面的に協力する体制をつくっている。そのような過程を経て、いくつかの国プロが進行中である。 ひとつが、文部科学省傘下のJST(科学技術振興機構)による産学共創基礎基盤研究プログラムへの参画であり、平成22年度(2010年度)東京工業大学の里教授の「鉄を活用した新規ナノヘテロ構造アルミニウム合金の創製と3D構造解析」が採択されて4年間にわたり実施された。現在継続中のプロジェクトは平成23年度(2011年度)採択の横浜国立大学廣澤准教授らで実施されている「超微細粒強化と時効析出強化を並立させる新規アルミニウム合金展伸材の開発とその合金設計指導原理の確立」と、平成26年度(2014年度)採択の九州大学戸田教授による「水素ポア制御によるアルミニウムの力学特性向上」等である。 また、経済産業省の「革新的新構造材料等技術開発プロジェクト」へも参画しており、新構造材料技術研究組合を通じて、革新的アルミニウム材の開発や新接合技術開発が行われている。特に、これからの時代は車にしてもマルチマテリアル化の時代を迎え、異種金属とアルミ合金同士の接合部の力学特性・耐食性向上が鍵となることが予想される。3.2 産学連携によるソーシャルイノベーションの深化 いずれの国家プロジェクトも産業界からのニーズを国がとりあげ、学会の協力を得る産学連携の技術開発プロジェクトであり、これは理想的な姿と思われる。 しかしながら、産業界と言っても同じ業種に属する企業の集まり(Cross Industrial)ではお互いに競合する企業同士であるため、優れたアイデアが出にくい状況が予想される。これを解決するのが、クロス・スキル型の企業連携である。実例として、携帯電話に使うゴムに穴をあける技術で課題を抱えた会社が、カーペットに印刷する会社から得たヒントでその課題を解決したという話がある。研究開発でも技術開発でも、全く異業種と思われる研究グループとの情報交換が大きなブレークスルーを生む可能性があることを忘れてはならない。 また、同じ企業の中でもクロス・スキル型の連携が功を奏したという事例がある。ゴルフクラブのゼククロススキル型連携

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