公益財団法人 軽金属奨学会 設立60年史
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78速で需給が緩和すると、余剰地金が自由世界に輸出され、状況は一転して供給過剰になるとの予測に変わってきた。2.2 中国の動向 今やGDP世界第2位の中国は世界のアルミニウム消費量の半分以上を占めるまでになり、世界のアルミ需給に大きな影響を与えつつある。国際アルミニウム協会の統計によると、中国の統計数字は別扱いになっており、中国を除く世界全体の数字が別個に掲載されている。2014年(平成26年)の世界のアルミニウム地金の生産量を見てみると、図にあるとおり、全体53百万トンのうち、中国については、報告された数字が2,394万トンで、他に推定未報告量が360万トンと記されている。アジアについては、中国を除いて243万トンである。 中国の地金需給バランスを見ると、供給が需要を上回り地金が余っていることが明らかである。これは、中国のアルミニウム製錬業も電力価格の高騰で赤字操業を余儀なくされている製錬所が多い中、雇用維持の観点から地方政府が支援し生産を継続している製錬所が多いためである。さらに、内陸の電力価格が安い地域においては、アルミニウム製錬所の新設があいついでおり、昨年だけでも約500万トンの増加となっている。 一方、付加価値を高めた製品については、低価格を武器に世界市場に浸透しつつあり、貿易摩擦問題もいくつか顕在化している。このような中、中国は地金の輸出には15%の輸出税を課しており、一方製品の輸出には付加価値税を還付している。この制度を悪用し国内市場で余剰となった地金をごく簡単な加工を施し半製品として輸出することで、輸出税を支払わず、しかも付加価値税の還付を受けているのではないかと言われている。いわゆる偽装地金が世界市場に出回るという問題が顕在化し、製錬業界を抱えている西側諸国は懸念を表明している。2.3 アルミメジャーの動き 資源メジャーと呼ばれる企業は、従来上流のビジネスを重要視しており、鉱山の権益を自ら手に入れて、或いは資本参加の形態で探鉱開発を行っ945.5 1583.6 4166.3 10027 15311.5 19275.4 25064.9 40348 50267.5 0 10000 20000 30000 40000 50000 60000 1946 1947 1948 1949 1950 1951 1952 1953 1954 1955 1956 1957 1958 1959 1960 1961 1962 1963 1964 1965 1966 1967 1968 1969 1970 1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2261.9 4% 810.5 2% 667.8 1% 24068.6 48% 1522.8 3% 2033.7 4% 1282.3 3% 915.4 2% 1026.9 2% 5250.1 10% 4386.9 9% 3705.8 7% 1076.8 2% 1258 3% 2014 5,027世界のアルミ新地金消費量推移(1946-2014)IAIのHPで公開されている統計数字(アルミ地金生産量)中国の新地金需給バランス

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