公益財団法人 軽金属奨学会 設立60年史
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64Fe)を0.2〜1.5%まで添加した合金の縦型高速双ロールキャストを行い、得られた板材を冷間加工により薄板にして、その強度(引張特性)ならびに成形性(曲げ性)を評価した。これにより、引張特性や曲げ性を低下させることなく6061合金に許容可能なFe含有量、すなわち強度や成形性を低下させるFeの悪影響を抑え、いわゆる無害化ができるFe量をどこまで増加させることが可能なのかについて検討を行った。その結果、Feの許容濃度を従来のDC鋳造での0.2%から0.7%まで拡大できることが判明し、リサイクル時にはFeの不純物混入量がおよそ0.2%増加すると予想されることから、縦型高速双ロールキャスト法がFeの無害化に大きく寄与できる可能性があることがわかった。3.1.2 通常法と縦型高速双ロールキャスト法で作製したFe量の多い6022合金の特性比較 [3,4] ここでは、縦型高速双ロールキャスト法で作製した6022合金に発生しやすい内部割れ(鋳造割れ)の発生原因について、鋳造条件の影響ならびに割れが発生する板厚中央の最終凝固部の組織に着目して検討を行った。さらに6022合金が代表的な自動車用パネル合金であることから、6022合金に過剰なFeを混入させ、Fe量と凝固速度が、最終的な圧延材の機械的性質に及ぼす影響について調査した。3.2 内部割れの発生メカニズムとその抑制ならびに高速双ロールキャスト材の表面性状改善 [5-7] 課題研究において、縦型高速双ロールキャストにおいては、Al-Mg-Si系合金中のSi量のわずかな違いが、ロールキャスト材の健全性に大きな影響を及ぼすことを明らかにすることができた。しかし、割れ発生のメカニズムを解明するには至らず、割れ3.課題研究終了後の研究の展開 課題研究を実施していた当時から数えて約10年の月日が経過したが、2.1.2で示した研究の意義と目的の内容は、いまだ色褪せていないと確信する。また、同じく2.2で示した今後の課題の内容についても、大阪工業大学の羽賀俊雄教授や群馬大学の渡利久規教授をはじめとする大学の研究者、日本アルミニウム協会、自動車や軽金属圧延関係企業のご支援を得ながら課題研究終了後も検討を続け、さらなる成果と新たな展開が得られている。縦型高速双ロールキャスト法を応用した溶融金属から直接クラッド材を製造する手法の開発は、その一例である。 以下、研究の方向性別に課題研究終了後の成果について紹介する。なお、ここでは紙面の関係より一部の成果については要約と関係論文の紹介に留めさせていただく。3.1 アルミニウムリサイクル促進への展開 課題研究で明らかとなった縦型高速双ロールキャスト法の優れた急冷効果を利用して、アルミニウムリサイクル促進のための研究を引き続き実施した。3.1.1 縦型双ロールキャスト法による不純物(鉄)無害化の実証試験 [2] 循環型材料としてのアルミニウムの価値をさらに高めるため、リサイクル材中の不純物の無害化に関する課題に取り組んだ。本研究は、平成18年度経済産業省委託調査として(社)日本アルミニウム協会が受託した「3Rシステム化可能性調査事業-アルミニウム展伸材スクラップから展伸材へのリサイクルの可能性調査事業-」の中の「不純物(鉄)の無害化効果テスト-縦型双ロールキャスト法による不純物(鉄)無害化の実証試験-」に採択された。 ここでは展伸用材料として汎用性が高いAl-Mg-Si系の6061合金をベースに、これに鉄(以下

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