公益財団法人 軽金属奨学会 設立60年史
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54ためと考えた。 これらの結果をもとに、過剰Mg合金とこれに0.2%Cuと0.7%Cuを添加した合金で、さらに詳しく調べた結果が図19である[17]。図19(a)は硬さの時効時間に対する変化で図19(b)は硬さ増分の時効時間に対する変化を示す。Cu添加で硬さの増加は大きくなり、0.7%Cuの添加で硬さは飛躍的に向上し、硬さの増分も0.2%Cu添加の場合よりも大きくなっている。また、時効時間に対する安定性もCu添加が効果的となる [17]。 高分解能電子顕微鏡観察によれば、析出粒子は転位上や結晶粒界に観察される。図20は、0.2%Cu添加合金をHPT加工した後に373Kで60ks時効した時の解析結果である[17]。母相の〈110〉方位に平行な方位から観察した画像であり約200nmの結晶粒内に粒子状の暗いコントラストを示す組織が確認される。図20(a)中の四角で囲った領域の格子像を図20(b)に示す。約5nmの粒状の組織で、モアレ縞とみられる粗い格子縞が観察される。面間隔や母相との方位関係から、この析出物はβ-Mg2Si, Si, β′, θ-CuAl2, S-Al2(Cu, Mg), あるいはQ-AlMgSiCuである可能性がある[17]。 図21は、0.7%Cu合金を373Kで60ks時効した試料をTEM観察した結果である[17]。図21(a)中の四角で囲った部分の拡大を図21(b)に示す。この結晶粒は母相の〈100〉方位を示し、粒内には転位とみられるコントラストが観察される。しかし、析出物は転位上には確認されない。結晶粒界には暗いコントラストが見られ、この部分(図21(b)中の四角で囲った領域)を高分解能観察して図21(c)示す。約1.02nmの正六角形の周期となり、AlMgSiCu四元系化合物のQ′あるいはQ相と推定される[17]。 図22(a), (b), (c)は、HPT加工した過剰Mg合金を含め、0.2%Cu、0.7%Cu添加合金を373K図20室温で6GPaのもと5回転HPT加工した0.2at%Cu添加過剰Mg合金を373 Kで60ks時効した時の(a)明視野像と制限視野回折パターン、および(b)明視野像中の四角で囲んだ領域の格子像。[17]図21室温で6GPaのもと5回転HPT加工した0.7%Cu添加過剰Mg合金を373Kで60ks時効したときの高分解能TEM解析:(a)明視野像と制限視野回折パターン、(b)四角で囲んだ(a)中の領域の拡大像、(c)四角で囲んだ(b)中の格子像。[17]

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