公益財団法人 軽金属奨学会 設立60年史
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53伸びや均一伸びはいったん低下してから大きくなる傾向となり特徴的である。 図16はHPT加工後に353Kで時効した試料を室温で引張試験した結果を示す[15]。5min時効後のピーク時効状態では引張強度は増加するものの、伸びが著しく減少する。その後時効とともに全伸びは回復するが引張強度は小さくなる。したがって、HPT加工のままが強度も伸びもバランスのとれた状態となる。2-2 マイクロアロイングの効果 図17は、統合的先端研究の成果として報告したものであるが[7]、Al-Mg-Si合金を基本組成としてMg2Siの配合比になるバランス合金と過剰にMgを含む過剰Mg合金にそれぞれ、Cu, Ag, Pt, Pdを微量添加し、848Kで1h溶体化処理してHPT加工を施し、373Kで時効処理した時の硬さ変化である[16]。図18は硬さの増分を時効時間に対してプロットしたものである[16]。HPT加工は室温で6GPaのもと5回転行っている。TEM観察によれば、結晶粒が300-400nmに超微細化していることが確認された。図17、図18より明らかなように、過剰Mgの場合で、しかもCuやAgを添加すると時効硬化に効果的となることが示された[16]。粒内には数個の析出粒子しか観察されなかったが、結晶粒径が本質的に小さいために数個の粒子でもオローワンの式より推定すると図18に示す強度の増加は十分に説明できるものであった[16]。CuやAg添加が強度増加に効果的な理由として、析出粒子の核生成速度が速くなったり、数密度が増加したり、また熱的安定性が増加する図19過剰Mg合金(Al–1.1%Mg2Si–0.4%Mg:単位はat%)とこれに0.2at%Cu、0.7at%Cuを添加した合金をHPTで5回転した試料の373K時効に伴う(a)硬さ変化、および(b)硬さ増分の変化。 [17]図18Al-Mg-Si合金を基本組成としたバランス合金、過剰Mg合金、およびCu, Ag, Pt, Pdを微量添加し、848Kで1h溶体化処理してHPT加工を室温、6 GPaのもと5回転施し、373Kで時効した時の硬さ増分の変化。[16]図17Al-Mg-Si合金を基本組成としたバランス合金、過剰Mg合金、およびCu, Ag, Pt, Pdを微量添加し、848Kで1h溶体化処理してHPT加工を室温、6GPaのもと5回転施し、373Kで時効した時の硬さ変化。[16]

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