公益財団法人 軽金属奨学会 設立60年史
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490.02%Cr,0.01%Zn,0.01%Ti:単位はmass%)の結晶粒を超微細化(約210nm)し、さらに373Kと423Kで時効した時の硬さ変化である[13]。比較のために、803Kで4h溶体化処理した試料の時効挙動も示している。423Kで時効した場合、HPT加工材では明らかに硬さが低下しているが、373 Kの時効では硬さはほとんど変化しない状況になっている。図3ではHPT加工時の回転数が5回転で大量にひずみが導入されているので、0.75回転と回転数を少なくして付与ひずみ量を制限し時効挙動を調べている。図4はその結果を示したものである[13]。HPT加工では円盤状の試料を用いるために、回転数とともに試料中心からの距離でもひずみ導入量が異なる。したがって、試料中心から異なる地点(4ヶ所)での硬さ変化を調べた。図4(a)より明らかなように、付与ひずみ量の増加とともに、硬さレベルが増加し、いずれも時効により硬さが増加する。ピーク強度はひずみ量が増えると短時間側にシフトする。すなわち、A6061合金は付与ひずみ量を適度に制御することによって、HPT材の強度は時効でさらに増加させることが可能となる。図4(b)は硬さ上昇分を時効時間に対してプロットしたものである。この硬さ上昇分には短時間側と長時間側にピークが2つあり、付与ひずみ量が大きくなれば短時間側のピーク値が大きくなり、長時間側のピーク値は小さくなる。 図5は室温6GPaで0.75回転した試料を373Kで(a, b)15minと(c, d)64h時効した試料のTEM組織(いずれも、左側が明視野(BF)像、図4HPTで0.75回転したA6061合金を373Kで時効したときの試料中心から異なる地点(4ヶ所)での(a)硬さ変化と(b)硬さの増分の変化。[13]図5HPTを室温6GPaのもと0.75回転したA6061試料を373 Kで(a,b)15 minと(c,d)64 h時効した試料のTEM組織(いずれも、左側が明視野像、右側が暗視野像、中央が制限視野回折パターン)。観察箇所は、(a,c)試料中央部(相当ひずみ1)と、(b,d)試料端部(相当ひずみが12)である。[13]

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