公益財団法人 軽金属奨学会 設立60年史
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461.はじめに 平成21年度から平成22年度にかけて軽金属奨学会統合的先端研究を実施することができた。「巨大ひずみ超微細粒アルミニウム合金の時効析出強化技術の開発」という研究題目のもとに、富山大学の松田健二教授、横浜国立大学の廣澤渉一教授(当時准教授)と共同で研究に臨んだ。研究の目的は、結晶粒微細化強化と析出強化の両強化が同時に実現できるかということである。 言うまでもなく、結晶粒微細化強化と析出強化は、固溶強化や転位強化(加工強化)とともに金属材料の代表的な強化法として知られている。しかし、結晶粒微細化強化と析出強化の両強化法を同時に活用することは容易ではない。両者が同時に実現できれば、超ジュラルミン(A2024)や超々ジュラルミン(A7075)のような高力アルミニウム合金はさらに強化できる新たな可能性を秘めることになり、期待が高まる。しかし、実現させるには乗り越えるべく大きな問題がある。 まず第一に、過飽和固溶体状態のままでいかに結晶粒を超微細化するかである。通常の加工再結晶を利用した結晶粒微細化技術では、再結晶の過程で、加熱のために過飽和度が減少することになる。また第二の問題として、仮に過飽和状態で結晶粒が微細にできたとしても、続く時効処理で細かい粒子を微細結晶粒内に析出分散させなければならない。結晶粒界が析出の優先サイトになって粒子が粗大化したり粒子分散が不均一になったりすることが懸念される。 統合的先端研究ではこのような二つの問題を解決すべく取り組んだ。第一の問題に対しては、形状不変の巨大ひずみ加工技術[1-4]を使って容易に解決することができた。この加工法は当研究室では平成4年度より手掛けてきたものである[5]。合金種を問わずに強制的に微細粒化できるため、溶体化処理後は過飽和状態を保ったまま結晶粒を超微細化することが可能となる。特に高圧下で円盤状試料にせん断ひずみを導入する高圧ねじり加工法(HPT: High-Pressure Torsion)[6]は難加工性の材料にも適用できることから、現在広く利用されるようになっている。 一方、微細結晶粒内に均一に微細粒子を析出させることができるかについては問題が残った。実際この問題は大きく、研究は容易ではなかったが、結晶粒微細化強化と析出強化の両立性は合金種によって難易はあるものの基本的に実現できることを示すことができ、このことは統合的先端研究の大きな成果と言える[7]。 統合的先端研究を終了した翌年の平成23年度に科学技術振興機構(JST)から産学共創基礎基盤研究「革新的構造用金属材料創製を目指したヘテロ構造制御に基づく新指導原理の構築」というテーマで公募があった。統合的先端研究をベースに横浜国立大学の廣澤教授を代表者として応募し採択されることになった。このJST産学共創事業は、産業競争力の強化と大学等の基礎研究活性化を目指すために、「産」が中心にテーマ設定するものである。研究メンバーには、新たに千葉工業大学の寺田大将准教授(発足当時は京都大学助教)が加わり、若手先導の研究開発チームとなった。廣澤グループの研究開発課題は「超微細粒強化と時効析出強化を並立させる新規アルミニウム合金結晶粒微細化強化と析出強化の両立性九州大学大学院 工学研究院教授 堀田 善治設立60周年記念特別寄稿

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