公益財団法人 軽金属奨学会 設立60年史
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18名称はアルミニウム産業界に資する財団であるので、「アルミニウム奨学会」がいいだろうということになった。事務所は、東洋アルミニウムの本社内に置く事で問題はない。 財団の「目的及び事業」は、当初からの小山田の願い通り、「軽金属に関する学術の研究及び教育を助成奨励しもって斯学の進歩に寄与することを目的とする」と定められた。この目的を達成するために行う事業としては、①軽金属に関する教育機関に対する資金の交付②軽金属研究者に対する研究資金の交付並びに資料の提供③軽金属に関係ある教育機関に在学する学生に対する奨学金の交付④その他前条の目的を達成するために必要な事業──の4点に整理された。 その他、資産及び会計、役員及び職員、会議、寄付行為の変更並びに解散などの項目に原案を盛り込み、上谷は役員会議に上程した。すんなり承認されるかと思った素案だったのだが、ここで思わぬところから待ったがかかった。非常勤役員であった為永清治会長と、来日中のDr.F.W.Bilnger取締役が、細部にわたって異を唱えてきたのである。 為永会長の注文は末節のことだったので、微調整で対応することができたのだが、Bilngerの注文は難題であった。定款にある財団の事業目的に、「経営学の助成」という項目を新たに入れるようにと要望してきたのである。 アルキャンのアジア担当役員として、世界を舞台にビジネスを展開してきた国際通のBilngerは、これまでにさまざまな財団を見聞してきた。海外には、そういった経営学の助成を実践している有が停滞しがちになります。ですから、できるだけ早く財団の内容を確定して、遅くとも11月末までには書類にして、財団設立を申請するようにしてください。それまでに申請できれば、私がなんとか各部署を回って、判子をもらってきますから」 親身な北野の言葉に、上谷は「わかりました。ありがとうございます」と、深々と頭を下げていた。「これでなんとかなりそうだ」という一条の光明が見えてきた気持ちであった。上谷の脳裏には、「小山田社長の肝いりでもあるし、いくらなんでも11月までには財団の全貌は明らかになるだろう」という計算があった。 しかし、実際にはこのあと、事態は最後の最後までもつれることになる。■アルキャン幹部のこだわり 北野事務官からの親身なアドバイスをもらった上谷は、その晩の夜行列車でとんぼ返りをし、翌朝には大阪駅からそのまま出社して、小山田社長に経過報告をした。小山田は目論み通りのスピード設立が可能なことを知ると喜んだ。「わかった。その調子でどんどん進めてくれたまえ。1月末までに設立するためなら、基本さえ誤らなければ、細部は妥協してもいいから、とにかくスピード優先でいこう」 上谷はさっそく、財団の骨子づくりに着手した。まずは財団法人の理念、設立趣旨を明確にし、その上で財団運営の憲法となる定款を策定しなければならない。これには竹田弁護士の力を借りた。 財団の「総則」に始まり、「目的及び事業」「資産及び会計」「役員及び職員」「会議」「寄付行為の変更並びに解散」「補足」まで、7章にわたる骨子を、竹田弁護士はつくってくれた。上谷は役員会議を重ねながら、この骨子に内容を盛り込んでいった。 まず、財団の名称と法人事務所の所在地である。Dr.F.W.Bilngerビルフィンガー

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